灰羽連盟というアニメをご覧になったことはありますか?
村上春樹の「世界の終わりとハードボイルドワンダーランド」からも影響を大きく受けている、謎が多くも心温まるストーリーのファンタジー作品です。
登場するキャラクター達の名前に込められた物語が特に感動的で素敵な大人向けアニメです。
今回はこの灰羽連盟の謎についての考察をつづります。
特にラッカとレキの名前に隠された秘密について、自分なりの解釈を踏まえて考察しました。
「灰羽連盟の内容を再度確認したい」「視聴したけど理解が追いつかなかった」と言う方は、是非ご参考にしてもらえる嬉しいです。
悲しいことにAmazon プライムビデオでは無料配信されていないんですよね。
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目次
灰羽連盟は考察して初めて感動できる
この作品は考察して初めて気づき、感動出来る作品だと思います。
考えずに見ることも十分出来る優しい作品なのですが、是非視聴後には自分なりの解釈を持って彼らのストーリーを考察していただきたいです。
その理由は、「名前に込められた物語がとにかく美しい」から。
この作品は悲しいけれど、あたたかい優しさにあふれた作品です。
きっと、考察して自分なりの答えを見つければ、生涯の記憶に残る作品になると思います。
そしてこの記事が皆様の考察の参考になれば幸いです。
灰羽連盟作品概要について
作画は美しい背景と淡い色彩での表現。
作中の楽曲も透明感のある美しいもので、作品の儚い雰囲気をとても上手く演出していてグッと作品に引き込まれていきます。
作品の世界観としては、
「壁に囲まれ閉鎖した街」「世界の始まり」「図書館」「森や鳥」など、
村上春樹の「世界の終わりとハードボイルドワンダーランド」に近い世界観です。
後半から物語が動き始めますが、作品の設定は最後まで明かさず、謎は謎のままラストを迎えます。
謎の答えと作品の解釈は、視聴者に丸投げ。
万人受けする作品ではないかも知れませんが、良い作品であることは間違いないと思います。
あれこれ思考をめぐらすことが苦痛でない方にはお薦めしたい作品。
あとは内容は二の次で、雰囲気で癒されたい方にもお薦めできますね。
自分も心が疲れたときにもう一度見たいと思える作品です。
※ここから先はネタバレになるので、視聴していない方はご注意ください。
灰羽連盟考察レビュー
灰羽連盟の物語がよく理解できなかった方は、作中に出てくるこの謎掛けの意味を理解することで、さまざまな謎が解けていきます。
「罪を知る者に罪は無い では汝に問う 汝は罪びとなりや」
なぜならこの謎掛けが、この灰羽連盟という作品の考察において最も重要かつ本質的なフレーズだからです。
では灰羽連盟の謎を、この謎掛けの意味を含めて考察していきます。
罪の輪から出られなくなる理由
なぜ、自身の罪の在り処を探すことで罪の輪から出られなくなるのか?
自分なりの解釈ですが、それは「自身の罪は自身で定めることはできない」から。
もう一歩踏み込むと、「自分が罪びとなのか、罪びとでないのか、それを決めるのは他人である」から。
「罪」とは「自身の行いを罪と認める相手」がいて初めて「罪」となる。
罪を認知する他者がいなければ、そこに罪はないのです。
だから自分一人で自分自身の罪の在り処を探すことには答えがない。
それが罪の輪だと思います。
「罪を知る者に罪は無い」の意味
では「罪を知る者に罪は無い」の意味とはなんなのか?
自分は「罪の輪から抜けること」が、罪を知ることだと考えています。
ではどのように罪の輪から抜けるのか。
先ほども書いた通り、罪は他者が罪と認めて初めて罪となります。
そして、何をどう贖ったって罪は消せるものではない。
しかし、罪は消せなくても罪を許すことは出来ると思うんです。
ここに罪の輪から抜けるヒントがあると考えています。
罪を許すのは自分ではなく他者です。
罪の相手がいるからこそ罪は罪となり、罪の相手がいるからこそ罪を許されることも出来る。
罪を許されない限り、自身の罪の本質的な意味を知ることは出来ず、人は罪の輪の中で生きていくしかない。
しかし罪を許されることで、自身の罪の意味を知り、罪の輪から抜けて、罪を背負って生きていくことは出来る。
「罪を知る者に罪はない」そして「罪の輪」とはそういう意味なんじゃないかと自分は解釈しています。
ラッカとレキについて
そしてそれを踏まえた上でのラッカとレキについて。
ラッカとレキは黒い羽からまた綺麗な灰色に戻りました。
これは自分の解釈では、罪を許されたからだと思っています。
ラッカとレキは自殺者という見解が多くあります。
確かに台詞からもそれは伺えます。
そしてその自殺が原因で罪憑きになったとの考えも多くあります。
しかし、私は自殺そのものが原因で罪憑きとして羽が黒くなったわけではないと考えています。
罪憑きの用件
私は、罪憑きと罪憑きでなくなる用件は以下が揃ったものと考えています。
【罪憑き】
- 自殺者
- 「罪」を知らない(繭の夢を思い出せない)
- 「罪」を許されていない
【罪憑きでなくなる】
- 自殺者
- 「罪」を知る(繭の夢を思い出す)
- 「罪」を許される
ではここで言う「罪」とは、何か。
それは、「自殺の原因となった自身の心」だと解釈しています。
そしてこの「自殺の原因となった自身の心」は作中では「繭の夢」として表現されています。
つまり、
「罪」を知る
↓
「自殺の原因となった自信の心」を克服する
↓
「繭の夢」を思い出す
ということです。
また「罪を許される」とは、自殺の原因となった心によって傷つけられた他者から許しを得ることです。
ラッカとレキの「罪」とは
ではラッカとレキそれぞれの「罪」は何なのか?
【ラッカの場合】
自分は一人だと思ったこと。孤独感。
ラッカは生前、自分がいなくなっても誰も悲しまないという強い孤独を感じていましたし、その感情はグリの街に来てからも残っていました。
だからクウが巣立ったとき、ラッカの心には悲しみと共に孤独の思いが生まれ、羽は黒く染まりました。
クウの部屋で自分の名前のカエルだけ転がすシーンが孤独の暗喩となっていると思います。
【レキの場合】
人を信じることをやめたこと。不信。
レキは過去にクラモリを失ったことで深い傷を負い、裏切られる恐怖から人を信じることを辞めていました。
そのため、レキは自分の真名が引き裂かれたるものの意を持つ名と知ったとき、救いを信じてきた末に裏切られた絶望、信じることの残酷さを再び知って不信が強くなり、羽は黒く染まりました。
ラッカとレキが罪憑きでなくなった理由
では二人はなぜ罪憑きでなくなったのか?
【ラッカの場合】
ラッカは孤独感から自ら消えてしまうことで大切な人を傷つけてしまっていました。
そしてその孤独感を克服できていませんでした。
そんな中、ラッカは井戸の中で鳥の骸と出会い、繭で見た夢の鳥の存在を思い出します。
「自分は一人ではない。生前に大切な人がいた」それを教えてくれた鳥がここにいて、自分を守ってくれる人がいて、自分は一人ではないとラッカは気づきました。
ここでラッカの孤独感は克服され、罪を知るものになります。
そして鳥(大切な人?)が井戸の中にその骸を残したのは、ラッカに一人ではないことを伝えるためであり、この時点で鳥はラッカの罪をすでに許していたのだと解釈しています。
これはラッカが井戸を出た後の、話師との会話の中からその意味合いが伺えますので、是非見返していただけたらと思います。
このことからラッカの罪憑きは無くなったのだと思います。
【レキの場合】
レキはクラモリを失って信じることに強い恐れを抱いてきました。
これまで決して自分から助けを求めなかったレキ。
それは求めた末に裏切られることへの恐怖や信じることへの恐れ原因となり、その心は克服できていませんでした。
そのためレキは、救いを求めて灰羽達に優しく振る舞っていたのです。
"優しく振る舞う"それはレキにとって"本当の自分を隠す事"でもあります。
救いを求めるがための偽りの自分であれば裏切られて傷つくこともないからです。
しかしその優しい振る舞いがやがてレキの本質となり、レキの本当の心となります。
作品の最後にその本当の自分から求めた救い、ラッカへの「助けて」の言葉。
誰も信じられなかったレキがラッカを信じ、助けを求めたシーンです。
ここでレキは自分の心の闇を克服し、「罪を知る者」となったと思います。
そしてそれにラッカが応えレキを助けます。
レキの言葉に酷く傷ついていたラッカ。
しかしレキの日記を読み、ラッカはレキを助けることを決意していました。
このことでレキの罪はラッカによってすでに許されていたと解釈しています。
そしてレキは罪憑きでなくなったのだと思います。
ラッカとレキの名前に隠された意味
また、ラッカとレキの名前に隠された意味も読み解いていくと、非常に美しく感動的です。
最後に明かされるラッカの真名は「絡果」絡む果実。
"人との絆を絡ませることで、実をつける"
ラッカが孤独を克服した末の真名が絡果というのは、なんと素敵な物語でしょうか。
レキの名も、礎となる小石の意味の「礫」から引き裂かれたるもの(軋轢)の「轢」となり、そして再び「礫」という名になっています。
これは、偽りの名の下で振舞ってきた優しさの「礫」が、本質である真名になったということを意味しています。
つまり、人のために尽くし優しく振舞うその心が、いつしかレキの本質を変えていったのです。
"人を信じることができない心を持ち、引き裂かれたるものの「轢」が真名という悲劇的な運命を、人を信じて人の支えとなる「礎」の心が変えていった"という名前の物語。
この仕掛けは本当に美しいなと今でも感動しています。
灰羽連盟考察のまとめ
この作品はずいぶん昔に視聴した作品です。
リアルタイムでは見ておらず、当時気になって少し遠出をして借りてきたのを覚えています。
結論は 「アニメ初心者の方もアニメ玄人の方も是非見て欲しい作品」ということ。
そして、「何度も見返して考察し、感動してもらいたい作品」ということです。
過去に見たことのある方も、再度視聴することでまた新たな感動がある作品です。
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再度視聴した上でわからない、考察の助けが欲しい。という場合はまたこの記事を読み進めていただけたらと思います。
本当にファンになった方は是非円盤も。
ちなみに、下記のサイトでアニメレビューをちらほら書いています。見たいアニメを探したりするのに最適ですので、興味ある方は覗いてみてください。https://www.anikore.jp/